胎(参照:漆芸用語集)の作り方は様々ありますが、木胎は漆工芸で最も一般的な胎と言えるでしょう。
木は古来から日本の建築や家具、食器や小物、あるいは燃料とあらゆる場面で使用されてきました。漆工芸においても木が最も一般的な素材であるのは当然のことかもしれません。
漆器で木が多く使われる理由は幾つかあります。
- 日本では容易に入手できる
- 加工が比較的容易
- 軽くて丈夫
- 熱伝導性が低く、熱いものを入れても手や唇に伝わりにくい
- 風合いが良い、ぬくもりを感じる
こうした優れた機能がある一方、白木のままでは食品が染み込みカビが生えやすいという欠点もあります。その欠点を補う上で、漆は木胎と非常に相性が良い塗料です。
漆は一度固まると水を通さず、また非常に腐りにくいという性質があります。9000年前の縄文時代の遺跡から漆塗りのくしが出土するのも、その性質があるからこそと言えます。
世界で最も木の文化が発達していると言っても過言ではない日本。その日本で漆の文化がこれほどまでに発展したのも必然と言えるかもしれません。