黒漆は特殊な作り方をします


漆器には朱、黄、緑、最近では紫や青など様々な色が使われています。その色はどうやって出すのでしょうか。

皆様ご想像の通り、顔料によって色付しています。精製した透漆(すきうるし 漆芸用語集参照)に、赤色系統なら古来より辰砂(しんしゃ)や弁柄(べんがら)といった顔料、緑なら酸化クロム(Ⅲ)などを使い、配合割合などを変えて目指す色を作り込みます。透漆と顔料があれば、いつでも色漆を調合できます。

しかし、黒だけは違います。黒漆は、特別なタイミングでしか作れず、一手間かかります。

以前の記事《漆をくろめる》で、生漆から漆を精製する工程を書きました。黒漆はこの「くろめ」の時に作るのです。正確には「くろめ」の前、生漆の状態の時に作るといったほうが良いのでしょう。

黒漆は、生漆に少量の鉄粉を混ぜて作ります。といっても、鉄粉を顔料のように使うのではありません。鉄粉は後に濾過して除去してしまうのです。

生漆に鉄粉を混ぜて10日間程毎日攪拌しながら置いておきます。すると鉄粉の一部が鉄イオンとなり、ウルシオール(漆芸用語集参照)と錯体を形成することによって全ての可視光を吸収する深い「漆黒」が出来上がるのです。。

生漆はちょうどミルクコーヒーのような色をしていますが、鉄粉を混ぜて数日経つと泡が立ち始め、グレーに変わってきます。色の変化がなくなった頃に漆をくろめれば黒漆の完成です。

生漆は保存が効かないこと、鉄粉を混ぜて毎日攪拌し、くろめを行うという作業が大変なことから、黒漆はそれほど頻繁に作ることができません。失敗すれば相当量の漆を失ってしまいます。

年に一度漆をくろめる時にしか作れない黒漆。

基本的な色でありながら最も奥が深い色です。

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