雑記


漆黒という言葉 1

美しい四季の移ろいがある日本には、色を表す言葉が多くあります。草花の色、空の色、水の色、生き物の色。”みどり”を表すだけでも ”もえぎ” ”苔” ”松葉” ”青磁” ”うぐいす” ”抹茶” ”青竹” ”若草”…と枚挙にいとまがありません。

黒についてはどうでしょうか。”黒”を表す最も代表的な言葉に”漆黒”という言葉があります。漆芸では様々な色を使います。仕上がりはそれぞれ美しいのですが、上手に塗りあがった時、言い表しようのない感動を覚えるのは黒です。

塗りあがったばかりの黒。まだ透明感がなく、マットな仕上がりです。それが10年も経つとどうでしょう。覗き込むと、どこに底があるのか分からない程に深い透明感をたたえ、手を入れればそこに無限の空間があるかのようにさえ思えてきます。

毎年長い冬に閉ざされるイヌイットの人々の言葉には、白を表す表現が20程もあるそうです。雪と氷を観察し続けたからこそ白の中にも違いを見出したのだと思います。

漆という文化を開花させた日本の色”漆黒”。私たちはこれを大切に受け継いでいます。