今月の投稿: 2月 2015


What is “Urushi”? -0   更新しました !

Urushi is one of natural lacquers and has been used in Japan for over thousands of years.

木曽漆器が根付いた理由   更新しました !

漆器の産地は全国にたくさんありますが、それぞれの地には、そこで漆器産業が根付いた理由があると思います。

木曽漆器は、塩尻市木曽平沢(旧木曽郡楢川村平沢)で主に作られています。木曽漆器が発展したのは

  • 現木曽郡上松町の御料林など、周辺で林業が盛んだった
  • 京都と江戸を結ぶ中山道沿いだった
  • 山地で日照時間が短く、農業に不向きだった
  • 夏の湿度が高く、漆器に向いていた

といった背景があったからでしょう。人の流れ、気候、漆の化学的な性質、それらの条件が満たされて産業として発達してきたのではないかと思います。気候と漆の化学の関係については別の記事で書くことにして、ここでは周辺の産業や歴史との関連について書こうと思います。

木曽平沢は、旧中山道奈良井宿と贄川宿との間に立地しています。中山道は江戸と京都を結ぶ街道の一つとして栄えてきました(正確には草津宿で東海道と合流)。近くには江戸幕府直轄林(明治以降は御料林と呼ばれた)があり、林業が盛んでヒノキなど漆器に適した材料が手に入り易かったのです。また奈良井宿は中山道六十九次のちょうど中間地点であり、大消費地の江戸と京都の両方に出荷できる環境だったことも大きく影響しているでしょう。

谷が深く農業には適さない地域で、宿場町でもない。そんな立地で人々が生計を立てるのに、漆器が最適だったのかもしれません。

漆をくろめ(黒目)る-材料について(2)   更新しました !

漆くろめ
漆くろめ1

くろめ始めたばかりの生漆

 

採取したばかりの漆は水分を多く含んでおり、この樹液のままの状態を生漆(きうるし)と呼びます。通常、漆はこのままでは使いません。夏の天日の下でかき混ぜながら水分を数%程度にまで下げるのです。

この作業を、漆をくろめる(黒目る)と呼びます。意外かもしれませんが、塗料としての漆は水分をほとんど含んでいないのです。

生漆はウルシノキの樹皮に傷をつけ、滲み出た樹液を集めたものです。天然の野山で採取するため、木屑や木の葉のかけらなどの塵が入っていたりと、塗料として使うには少々手を加えなければなりません。

しかし、一番厄介なのは目に見えないモノ ー微生物ー です。生漆は水分も多く、微生物の栄養となる物質も多く含んでいます。そのため生漆のまま長期間保存しておくと腐ってしまうことがあります。

微生物の生育を抑え、また漆の性質を整えるために”くろめ(黒目)”を行います。


くろめ2

天日の下で漆をくろめる

くろめの方法は地域や職人により異なりますが、漆 海棠では”船”と呼ばれる広い容器に漆を広げ、ゆっくりとかき混ぜながら水分を蒸発させる方法で行っています。広い面積に広げることで、大量の漆を一度にくろめることができるのが特徴です。

生漆は、漆の成分と水が乳化しているため白く濁っています。くろめが進んで水分が蒸発するにつれ、本来の漆の色が出てきます。色のグラデーションは、水分量の違う部分です。

夏の炎天下でくろめを進めると、漆が熱をおびてきます。

熱くなりすぎると漆が固まらなくなってしまうため注意が必要です。

逆にこの性質を利用して、乾きの遅い漆を作ることもできます。


IMG_0528

水分が蒸発し本来の漆の色に

だんだんと水分が蒸発し、黒糖色になってきました。

もう少しでくろめが完了です。

この時点では50℃近くに達しています。

あまり長い時間高温にしておくと、劣化の原因となってしまいます。


IMG_0543

くろめた漆を船から取り出す。麻布で濾過。

くろめが終わり、船から 漆を取り出します。

生漆には塵が混じっているので、粗い麻布で濾過します。

生漆の状態で桶いっぱいだったのが、くろめた後にはこんなに少なくなりました。

生漆は水分を20〜30%程度含んでいるので、その分減ってしまったのですね。

IMG_0541

くろめ後。元は樽いっぱいの生漆が入っていた

乾漆という技法   更新しました !

江戸打ち紐を漆で固める

江戸打ち紐を漆で固める

 漆器の材料は木材だけではありません。漆を塗る前の器の部分を胎(たい)と呼びますが、胎には木ばかりでなく布、紙、皮、金属、ガラスなど様々な物を用いることができます。

布や紙を漆で固めて胎を作る技法を”乾漆”と呼びます。乾漆は元が布や紙なので、木胎よりも簡単に自由な形に仕上げることができます。

これから絹の江戸組紐を漆で固めて箸置きや花器を作ります。紐や布を漆で固める技法を乾漆と呼びます。

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木胎 -胎について(1)   更新しました !

ろくろで木地挽き

胎(参照:漆芸用語集)の作り方は様々ありますが、木胎は漆工芸で最も一般的な胎と言えるでしょう。

木は古来から日本の建築や家具、食器や小物、あるいは燃料とあらゆる場面で使用されてきました。漆工芸においても木が最も一般的な素材であるのは当然のことかもしれません。

漆器で木が多く使われる理由は幾つかあります。

  • 日本では容易に入手できる
  • 加工が比較的容易
  • 軽くて丈夫
  • 熱伝導性が低く、熱いものを入れても手や唇に伝わりにくい
  • 風合いが良い、ぬくもりを感じる

こうした優れた機能がある一方、白木のままでは食品が染み込みカビが生えやすいという欠点もあります。その欠点を補う上で、漆は木胎と非常に相性が良い塗料です。

漆は一度固まると水を通さず、また非常に腐りにくいという性質があります。9000年前の縄文時代の遺跡から漆塗りのくしが出土するのも、その性質があるからこそと言えます。

世界で最も木の文化が発達していると言っても過言ではない日本。その日本で漆の文化がこれほどまでに発展したのも必然と言えるかもしれません。

材木の乾燥-材料について(1)   更新しました !

乾燥中の材木1

乾燥中の材木

材木が使えるようになるまで数年かかる

〜生木は歪む〜

漆器の最も一般的な(器などを形作る部分)の材料は木です。

木は、切り倒したばかりの生木の状態ではかなりの水分を含んでいます。水分は次第に蒸発し、その過程で材木が歪みます。生木をろくろなどで整形しても、しばらく置いておくと歪んでしまい狙った通りの形の胎になりません。


乾燥中の材木2

材木の木口に和紙を貼って乾燥させる

材木を乾燥させる

整形後に歪んでしまわないように、材木は風通しの良い日陰で2〜3年乾燥させます。木は木目の具合によって歪む方向が異なるため、木目の揃っていない広葉樹はヒビが入ってしまうことがよくあります。ヒビ割れを防ぐため、木口にでんぷん糊で和紙を貼っておきます。

紙では破れてしまうように感じますが、これが伝統的なヒビ割れの防ぎ方です。


粗削りした材木

粗削りした材木

粗く整形してからもう一度乾燥

材木を乾燥させても安心はできません。大きな塊の材木は、場所によって歪みが異なります。そのため乾燥後でも、一部を削ると新たな動きが始まります。非常にゆっくりとした動きですが、1年、2年と経つうちに目で見てわかるくらいになることもあります。

目的の形に粗削りし、歪みが止まるまでまた数年寝かせます。時間のかかる作業ですが、材料から丁寧に作り込むことを大切にしています。

塗りと研ぎを繰り返す   更新しました !

DSC_2853

漆器は、生地に何度も丁寧に漆を塗り重ねて作ります。通常、木地から仕上げまで6回以上塗りの工程があります。ただ単に塗り重ねると書くと簡単に聞こえるかもしれませんが、実は大変な作業です。

漆は、光沢のある平滑面にはうまく付きません。塗ることは出来ても、ちょっとした衝撃や力で剥がれてしまいます。

漆を塗って、乾くとツヤが出ます。これは下塗りでも中塗りでも同じです。このツヤのある面に次の漆を塗っても、強度が出ません。

そこで、最後の仕上げ以前の段階では、漆を塗ったら必ず研ぎの工程が入ります。

砥石

砥石

塗る>>研ぐ>>塗るの繰り返しです。

漆は研げる程しっかり乾くのに2日ないし3日、色漆の場合には5日程かかるので、1層塗るのに一週間程度要します。

木地から仕上げまで6回塗ると、仕上げまで最低でも一月半の時間がかかってしまいます。そこに装飾が加われば更に時間が必要です。

ご注文からお渡しまで数ヶ月お待たせしてしまうこともありますが、気長にお待ちいただければ幸いです。度々製作過程を見に来ていただければ励みにもなりますので、ぜひ工房にお越しください。