今月の投稿: 1月 2015


文化財のくらし

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漆 海棠の店舗兼住居と工房の土蔵は国の登録有形文化財です。木曽漆器の町、長野県木曽平沢に特徴的な建築様式を今に留めていることが評価され、2000年12月に登録されました。

母屋の内部は書院造りを基本とし、外観については建物が街道に面していること、庇が非常に長いこと等を特徴としています。丁寧な柱の継ぎ目、漆喰の壁、柾目の天井板、床の間の黒柿材、至る所に先人の技を噛みしめながら暮らしています。

工房の土蔵もまた分厚い土壁と漆喰に覆われ、漆の乾燥に重要な温度や湿度が年間を通じて変化のないよう作られています。構造は単純で非常に無駄がなく、機能美を感じます。100年程前に建てられた蔵は所々傷んでいますが、これを少しずつ直しながら、日本の建築文化を後世に残していかなければなりません。

漆器もまた、日本が世界に誇る文化の一つです。これを守り、世に広め、のちの世に伝えることは私たち漆芸家の使命です。

 

黒漆は特殊な作り方をします

黒漆

漆器には朱、黄、緑、最近では紫や青など様々な色が使われています。その色はどうやって出すのでしょうか。

皆様ご想像の通り、顔料によって色付しています。精製した透漆(すきうるし 漆芸用語集参照)に、赤色系統なら古来より辰砂(しんしゃ)や弁柄(べんがら)といった顔料、緑なら酸化クロム(Ⅲ)などを使い、配合割合などを変えて目指す色を作り込みます。透漆と顔料があれば、いつでも色漆を調合できます。

しかし、黒だけは違います。黒漆は、特別なタイミングでしか作れず、一手間かかります。

以前の記事《漆をくろめる》で、生漆から漆を精製する工程を書きました。黒漆はこの「くろめ」の時に作るのです。正確には「くろめ」の前、生漆の状態の時に作るといったほうが良いのでしょう。

黒漆は、生漆に少量の鉄粉を混ぜて作ります。といっても、鉄粉を顔料のように使うのではありません。鉄粉は後に濾過して除去してしまうのです。

生漆に鉄粉を混ぜて10日間程毎日攪拌しながら置いておきます。すると鉄粉の一部が鉄イオンとなり、ウルシオール(漆芸用語集参照)と錯体を形成することによって全ての可視光を吸収する深い「漆黒」が出来上がるのです。。

生漆はちょうどミルクコーヒーのような色をしていますが、鉄粉を混ぜて数日経つと泡が立ち始め、グレーに変わってきます。色の変化がなくなった頃に漆をくろめれば黒漆の完成です。

生漆は保存が効かないこと、鉄粉を混ぜて毎日攪拌し、くろめを行うという作業が大変なことから、黒漆はそれほど頻繁に作ることができません。失敗すれば相当量の漆を失ってしまいます。

年に一度漆をくろめる時にしか作れない黒漆。

基本的な色でありながら最も奥が深い色です。

オーダーメイドも承ります

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当店は木地から全て手作りしているので、多様なオーダーに対応可能です。形、大きさ、材質、仕上げ等ご希望をご連絡下さい。すぐにお見積もりをご返信いたします。

漆黒という言葉 1

美しい四季の移ろいがある日本には、色を表す言葉が多くあります。草花の色、空の色、水の色、生き物の色。”みどり”を表すだけでも ”もえぎ” ”苔” ”松葉” ”青磁” ”うぐいす” ”抹茶” ”青竹” ”若草”…と枚挙にいとまがありません。

黒についてはどうでしょうか。”黒”を表す最も代表的な言葉に”漆黒”という言葉があります。漆芸では様々な色を使います。仕上がりはそれぞれ美しいのですが、上手に塗りあがった時、言い表しようのない感動を覚えるのは黒です。

塗りあがったばかりの黒。まだ透明感がなく、マットな仕上がりです。それが10年も経つとどうでしょう。覗き込むと、どこに底があるのか分からない程に深い透明感をたたえ、手を入れればそこに無限の空間があるかのようにさえ思えてきます。

毎年長い冬に閉ざされるイヌイットの人々の言葉には、白を表す表現が20程もあるそうです。雪と氷を観察し続けたからこそ白の中にも違いを見出したのだと思います。

漆という文化を開花させた日本の色”漆黒”。私たちはこれを大切に受け継いでいます。

木曽漆器が根付いた訳

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漆器の産地は全国にたくさんありますが、それぞれの地には、そこで漆器産業が根付いた理由があると思います。

木曽漆器は、塩尻市木曽平沢(旧木曽郡楢川村平沢)で主に作られています。木曽漆器が発展したのは

  • 現木曽郡上松町の御料林など、周辺で林業が盛んであった
  • 京都と江戸を結ぶ中山道沿いであった
  • 山地で日照時間が短く、農業に不向きであった
  • 夏の湿度が高く、漆器に向いていた

といった背景があったからでしょう。人の流れ、気候、漆の化学的な性質、それらの条件が満たされて産業として発達してきたのではないかと思います。気候と漆の化学の関係については別の記事で書くことにして、ここでは周辺の産業や歴史との関連について書こうと思います。

木曽平沢は、旧中山道奈良井宿と贄川塾との間に立地しています。中山道は江戸と京都を結ぶ街道の一つとして栄えてきました(正確には草津宿で東海道と合流)。近くには江戸幕府直轄林(明治以降は御料林と呼ばれた)があり、林業が盛んでヒノキなど漆器に適した材料が手に入り易かったのです。また奈良井宿は中山道六十九次のちょうど中間地点であり、大消費地の江戸と京都の両方に出荷できる環境だったことも大きく影響しているでしょう。

谷が深く農業には適さない地域で、宿場町でもない。そんな立地で人々が生計を立てるのに、漆器が最適だったのかもしれません。

木曽漆器の変遷

Entrance

漆 海棠の玄関

漆 海棠は旧中山道奈良井宿と贄川宿の間に位置する漆器の町、木曽平沢で代々続く漆芸店です。

  • 世界に誇る日本の伝統技法を使いながらも、現代生活に取り込みやすいモダンな作品を提案すること
  • 後世に漆の技術を伝え文化を守ること

をコンセプトとして活動しています。モダンな作品を作ることと伝統文化を守ることとは相容れないように感じるかもしれませんが、私たちはむしろこの活動こそ文化を伝承していく最良の方法だと信じています。

ここで少し漆器製造についてお話ししておきましょう。
産業としての漆器製造は生地を作る木地屋(きじや)、塗りが専門の塗師屋(ぬしや)、加飾を専門とする絵付師というように分業化されているのが普通です。
定型の木地を大量に作り、各工程を専門の職人が行うことでコスト的にも時間的にも、また生産能力の面でも優れています。一方で、どの品をとってもそれほど変わり映えがしないという結果に陥りやすいという構造も孕んでいます。実際、木曽漆器は一度かなり衰退しました。現在では勢いを取り戻しつつありますが、30年ほど前まではどの漆器店も同じような物を製造して過当競争に陥り、一部は外国産の安価な漆器を仕入れ、あるいは漆に似た塗料(ウレタンなど)を使用した製品を売るなどして自らの価値を下げてしまいました。時代が変化しても旧来同じものを作り続け、その結果徐々に人々に受け入れられなくなり、遂には廃業した漆器店も多くあります。これでは伝統文化を守れるはずがありません。

私の父は、まさにこの変遷を目の当たりにした世代です。当店も先々代までは職人を雇って漆器を製造し、日本各地の旅館や料亭に卸す製造卸でした。大正から昭和へ、そして戦後の高度経済成長時代にかけて漆器産業は衰える事がありませんでした。その陰で、日本国民の生活は西欧化が進み、漆器を使う家庭が減っていきました。漆器の消費はどんどん減って行き、先ほどお話しした道を辿りました。漆器の数十年使えるという特性も災いしたかもしれません。時代の変化を敏感に感じ、それに合わせて変化していかなければせっかくの素晴らしい文化も衰退してしまうのです。

父はそのことに気づいていたのでしょう。旧来の漆器製造をやめ、自ら木地を挽き下地を施し、仕上げまで行う漆芸作家の道を選びました。その作風はモダンで、テーブルにも洋食にも違和感なく使える作品が多数あります。私も幼い頃から父の作品に触れ、知らずしらずの内にモダンな漆器が当たり前の存在となっていました。そして今日、その作風を継承しつつ更に発展させています。

伝統とは、変化しない核心(コア)部分を堅持しつつ、常に技術とデザインを向上させ、その結果人々に受け入れられ、学びたいと思う人が多く現れ、世に広まり受け継がれていくものだと私たちは考えています。

漆芸用語集 1

材料

漆(うるし)
ウルシノキの樹皮に傷をつけ、滴った樹液を集めて精製した日本古来の塗料。固まると極めて腐敗に強く、また艶やかな光沢を放つ。
生漆(きうるし)
塗料としての漆は通常くろめと呼ばれる工程を踏んでから使用する。生漆とはくろめる前の漆を指す。生漆は水分を約60%程度含み、ウルシオールを主とする成分が乳化して分散しているため白く濁って見える。生漆は常温で放置すると腐りやすい。詳しくは過去記事《漆をくろめる》参照。
透漆(すきうるし)
何も色を付けていない漆。透漆に顔料を混ぜることで色漆を調合する。

製作過程・技法

乾漆(かんしつ)
布や紙を漆で固める技法。自由な形に成形でき、素材の独特な風合いが楽しめる。
くろめ
生漆の水分を蒸発させ、透漆(すきうるし)を得る工程。
漆皮(しっぴ)
革を石膏や木の型で整形し、後に漆で固めた胎。乾漆の一種とも考えられる。
胎(たい)
器を形作る構造部分。ろくろで挽いた白木の椀や、型取っただけの革の盆など漆を塗る前の状態のこと。
木胎(もくたい)
木で作った胎。椀や盆など丸いものはろくろで挽くのが一般的。

漆の科学

ウルシオール
漆の主成分。フェノールの誘導体で、漆に含まれるラッカーぜを触媒として酸化重合し、強固な塗膜を形成する。漆が「乾く」という表現はこの酸化重合のことを指し、水が蒸発して乾くのとは意味が異なる。
ラッカーゼ
漆に含まれる酵素。ラッカーゼの作用により漆が固化する。熱に弱いため、漆を加熱すると固まらなくなる。ラッカーゼの言葉の由来となっている「ラッカー」とは、樹液から得られた天然塗料のことであ。漆もラッカーの一種である。
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漆をくろめる 1

漆くろめ1

くろめ始めたばかりの生漆

 

採取したばかりの漆は水分を多く含んでおり、その状態を生漆(きうるし)と呼びます。通常漆はこのままでは使いません。

夏の天日の下でかき混ぜながら水分を数%程度にまで下げるのです。この作業を漆を”くろめる”と呼びます。意外かもしれませんが、塗料としての漆は水分をほとんど含んでいないのです。

生漆はウルシノキの樹皮に傷をつけ、滲み出た樹液を集めたものです。天然の野山で採取するため、木屑や木の葉のかけらなどの塵が入っていたりと、塗料として使うには少々手を加えなければなりません。

しかし、一番厄介なのは目に見えないモノ ー微生物ー です。生漆は水分も多く、微生物の栄養となる物質も多く含んでいます。そのため生漆のまま長期間保存しておくと徐々に腐ってしまいます。

微生物の生育を抑え、また漆の性質を整えるために”くろめ”を行います。


くろめ2

天日の下で漆をくろめる

”船”と呼ばれる広い容器に漆を広げ、ゆっくりとかき混ぜながら水分を蒸発させます。

生漆は、漆の成分と水が乳化しているため白く濁っていますが、水分が蒸発するにつれ本来の漆の色が出てきます。色のグラデーションは、水分量の違う部分です。

夏の炎天下でくろめを進めると、漆が熱をおびてきます。

熱くなりすぎると漆が固まらなくなってしまうため注意が必要です。

逆にこの性質を利用して、乾きの遅い漆を作ることもできます。


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水分が蒸発し本来の漆の色に

だんだんと水分が蒸発し、黒糖色になってきました。

もう少しでくろめが完了です。

この時点では50℃近くに達しています。

あまり長い時間高温にしておくと、劣化の原因となってしまいます。


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くろめた漆を船から取り出す。麻布で濾過。

くろめが終わり、船から 漆を取り出します。

生漆には塵が混じっているので、粗い麻布で濾過します。

生漆の状態で桶いっぱいだったのが、くろめた後にはこんなに少なくなりました。

生漆は水分を20〜30%程度含んでいるので、その分減ってしまったのですね。

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くろめ後。元は樽いっぱいの生漆が入っていた

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